川端裕人さんの「みんなのPTAを探して」(「婦人公論」連載:2007/4〜2008/3)のバックナンバーを「ブログ版」として公開しています。(著者公認)
 はじめていらっしゃった方は、まずは著者本人の「ごあいさつ」をお読みください。
管理人:Pさん
 

2007年10月26日

第5回 学級PTAの潜在力を思い出そう


本家関連エントリー
 PTA連載5回目学級PTAのこと (2007.6.7)
 第5回「学級PTAの潜在力を思い出そう」 (2007.10.26)


 枝葉をそぎ落としてエッセンスだけの単純なPTAを考えてみると──、
 それは、学級PTAと役員だけ、あるいは役員すらおかず、学年・学級委員会だけ、という構成になるだろう。学年・学級委員は、PTAの必要欠くべからざる要素であって、個々の会員とPTA全体との直接的なパイプ役だ。


■ 代表的な6つの委員会


 「PTAの謎」解明プロジェクトは続く。今回からは代表的な委員会を見ていく。どんな委員会があるかはPTAによるのだけれど、そこは前回紹介した「PTAのしおり──みんなで学ぶPTA」(世田谷区立小学校PTA連合協議会と教育委員会発行)の組織図例に則る。

 学年・学級委員、広報委員、文化厚生委員、校外委員会、役員選出委員会の6つ。これらは、多くの場合、クラスから一人ずつ選ばれて、規約で定められた仕事にあたる。委員長、副委員長、時には書記、会計といった役職もあって、それぞれ任された範囲で、独立性の高い活動をする。ちなみに、各委員長まで含めて役員とするPTAもあり、その場合は、会長・副会長・書記・会計のいわゆる四役は、本部役員と呼ばれる。
 
 委員会と役員(本部役員)の関係は、単純に上下ではなく、やはり「横」だ。役員は各委員会の活動を統括・調整する立場にあるのだが、単純に役員が管理するわけではなく、別の仕組みがある。委員会について語るには、まずそのあたりに触れておかねばならない。

■ 運営委員会とは何者?


 その「仕組み」が、運営委員会。

 とはいえ、PTA活動をしている人に、何の委員かを聞いて「運営委員です」という答が返ってくることはまずない。運営委員会には、専任の委員はいないからだ。役員と各委員会の委員長や副委員長が、招集されて委員になる。みな、運営委員である前に、広報委員長、校外副委員長、書記などといった、別の役割をすでに担っている。つまり、PTA活動の責任者が集まって議論する場だ。

 招集の権限は会長にあり、通例は一ヵ月か二ヵ月に一度、開催される。そして、役員が行う事務処理の承認を得たり、各委員会の個別の活動について連絡調整し合ったり、企画を審議したりする。

 年に一度か二度しか開かれない総会では、会の基本方針は決めることができても、実際の活動のために必要な諸々の判断は下せない。そもそも総会は議決機関であり、決定はしても実行には責任を負わない(参加者は執行部に決定の実行を預ける)。その責任を引き受けるのが執行機関としての運営委員会だ。役員の「統括・調整」の機能は運営委員会の運営側に立つ部分で発揮され、実際には、各分野の責任者の合議の中で、活動を相互にチェックしあい、調整していく。

■ 必要欠くべからざる要素


 その上で、学年・学級委員会。まず第一の仕事は、学級PTAの運営だ。前出の「PTAのしおり」では、「子どもを知り、教育を知るための学習の場をつくる」「会員の横の結びつきを図り、よりよい人間関係を築いて、PTA活動への参加意欲を高める」と表現されている。

 具体的には、学級単位の懇談会や懇親会を開く。話し合う内容は、それこそ、なんでもあり。会員が家庭教育上の悩みを出し合って、意見を述べ合うのは、どこでも行われている「相互学習」だろう。習い事のこと、家庭での家事手伝いのこと、携帯ゲームや携帯電話をどう考えるか等々、その時その時に会員が切実に思っている問題を取り上げて、意見交換する。別の視点から子どもを見ている教師が積極的に加わると、議論に膨らみが出る。
 熱心な委員さんだと、学級PTA通信を出してくれることもある。保護者紹介(会員紹介)から始まって、共通の関心事なら何でも扱ってよいわけで、委員の編集権(?)たるや絶大だ。

 最近、「PTA仲間」とでも呼ぶべき友人だちと話しをする機会が多くなっており、そこで聞き知った体験談を引く。

 同じ区内の仲間の一人は、自分が学年・学級委員だった年に、さかんに学級PTA通信を出した。保護者紹介を中心としたものだったが、それでもずいぶんクラスの風通しがよくなった実感があるという。たとえば、子どもの安全について多くの人が興味を持っているとわかったため、安全に関するワークショップを、学級PTAとして開くことができた。自主的に学びたいことを学ぶという意味で、この活動は実にPTAらしいものだった。

 中学校PTAの学年・学級委員として、学級PTA通信を通じて「親子討論会」を実現してしまった人もいる。まず最初に、保護者側の「今の中学生への苦言・提言」を掲載したところ、それに対して子どもから「反論・弁解」がよせられ、それならば、と討論会を開いた。中学生にもなると、子どもには子どもの世界があるし、親と子が話し合う共通の基盤がなくなってしまいがちだ(ぼくはまだ中学生の子どもを持っていないから、あくまで想像だが)。それを学級PTAで、学級通信を通じて見事に突破してみせた。

 別に学級PTA通信にこだわらずとも、学年・学級委員にできることは多い。ぼくがこれまで耳にした中で、おもしろかったものを挙げると─────、
  • 会員(保護者)の中の外国人、配偶者が外国人である人、外国で子育てをしたことがある人をパネラーにして、「世界の子育て」というパネルディスカッションを開催し、大いに盛り上がった。
  • 有志をつのっての、親子読書会。のちに学校PTA全体の活動に発展した。
  • 親が子に自分の仕事について語り、子どもがそれについて感想文を書く。それを委員がまとめて文集にし、子どもは授業で、保護者は学級懇談会で、読み合わせて話し合った。
 などなど。

 いずれも、保護者が学び、子どもにその成果を還元していくPTAの基本的な考え方が背後にあって、ぼく自身そんなことができたらいいなあ、思ってしまう。
 たぶん、もっと多くのPTA仲間や先輩たちと知り合えば、もっと多くの素敵な実例を知ることになるだろう。それだけ柔軟な取り組みを許され、期待されるのが、学年・学級委員だ。
 

■ 保護者会とPTAは別物


 さらにもう一点、重要や役割として、「学校全体のPTAとのパイプ役」「学校やPTAに対する意見や提言を汲み上げる」(PTAのしおり)といったことがある。
 ほとんどのPTAで、学級代表の委員が運営委員会に出席してPTA全体の舵取りにかかわる。委員長と副委員長しか出席しない他の委員会と比べて特別扱いされているわけだが、根拠は単純だ。

 つまり、PTAは、もともと学級PTAを単位として組織されているからだ。個々の会員の代表として各クラスの学級委員が執行機関(運営委員会)に加わるのはむしろ当然なのだ。

 枝葉をそぎ落としてエッセンスだけの単純なPTAを考えてみると──、それは、学級PTAと役員だけ、あるいは役員すらおかず、学年・学級委員会だけ、という構成になるだろう。学年・学級委員は、PTAの必要欠くべからざる要素であって、個々の会員とPTA全体との直接的なパイプ役だ。「横の組織」の肝心な部分を担っている。

 現状の問題点はあちこちで耳にする。その中で、一番本質的なのは、PTAにおける学年・学級委員の重要性、それ自体が、今ではあまり意識されなくなっていることかもしれない。面倒の多い「役」を引き受けている委員たちを批判しているわけではない。むしろ、ぼくら全員が、学級PTAの潜在力を忘れてしまっているように思える。

 今、多くのPTAで、学校主催の保護者会の後に学級PTAの時間が取られている。10や20ではきかない「知り合い」のPTAが例外なくそうだから、かなり普遍的な現象だろう。その際、多くの保護者が、「保護者会とPTA」の区別がつかなくなってしまうらしい。保護者会はあくまで学校が主催するもの。それで、多くの人が集まるから一緒に学級PTA(学級懇談会)も開きましょうというのが、もともとの考えだと思うのだが、それが今では融合して見える。保護者会は教師が主催するものだから、どうしても受け身になるし、混同してしまうと、学級PTAで何かを始めようという意識が育ちにくい。

 実はぼくもつい最近まで、保護者会とPTAの区別ができていなかった。学年・学級委員の立場でできることの多さにも考えが至っていなかった。昨年、役員に立候補した時、「まず学級PTAでいろいろやってみたら」と助言してくれる人がいたのだが、今にして真意がわかる。

■ 広報に立ちはだかる校長


 学年・学級委員会以外の各委員会を専門委員会とよぶことがある(もちろん、運営委員会はまた別)。学年・学級委員がPTAの基本だとしても、実際のPTA活動はあまりに広汎なので、ひとくくりにできる仕事は、専門の委員会を作って任せた方が効率的で、仕事も分散できる。それが専門委員会の意味だ。

 広報委員会は、学校PTA全体での広報活動を引き受ける。「会員への情報提供と問題提起」「地域社会や関連する団体にPTAをよく知ってもらう情報」などに加えて、「教育環境や教育条件の改善向上のために世論を形成する情報」を提供することも期待されているという。(「PTAのしおり」)。活動内容としては、年3回程度の広報誌をつくるところが多い。PTA新聞の形式の場合もあれば、雑誌的な体裁をとることもある。

 やりようによれば楽しく盛り上がるので、しばしばPTA活性化の起爆剤にもなる。活発な広報委員会に共通するひとつの特徴は、「自分で取材する」ことだ。会長経験もある都内のPTA仲間が広報委員長だった時、「なんでもすぐ取材!」をモットーにして、さかんな活動につなげた例が頭に残っている。

 例えば広報委員会のミーティングで、プールの話題が出たとする。
  • 腰洗い漕で肌が赤くなるのが気になる。
  • ゴーグルをしてはいけないのはなぜ?
  • プールの掃除ってどうなっているの?
  • 日焼け止めは塗ってはいけないの?
 などという疑問が出たら、すぐ取材。学校の管理上の問題は学校に、それでもわからない部分は役所にまで行って話を聞いて謎を解明する。ほかにも、PTAで集めていた使用済みテレカが、その後、どこにいってどう使われているのか。学校では教師である先生方自身の子育てはどんなふうか……等々。

 さまざまな取材をフットワークよくこなすうちに、PTAが、いやいややらされているものではなくて、「自分たちの場」になっていったという。

 また別のPTA仲間は、やはり広報委員長をつとめた時に、「体裁よりも、こまめに出すこと重視」を実践してニュース性を高めた。年に3回だけだと、学校行事の紹介や、会長や校長への依頼原稿などで誌面が埋まってしまいがちなのだが、これなら、会員が知りたい時に知りたい情報を掲載できる。

 もっとも、彼女は広報の活動にストレスも感じていて、その理由がかなり普遍的なものらしいので紹介しておく。

 会員(保護者)の家庭での教育や育児にまつわる実態調査アンケートを取って、特集にしようと考えたところ、その時に立てた多くの項目が「校長チェック」で外されたという。たとえば、習い事の種類、お小遣いの額、親の職種……等々、校長が個人情報だと考えるものすべてだ。おそらく校長の意見にも一理あったのだと思うが、何が個人情報で、どう取り扱うべきなのか議論することもなく、一方的に「ダメ出し」された。彼女は結局、何が本当に問題だったのか今でもわからないまま、鬱屈感を抱えている。

 広報の活動では、やる気があればあるほど、しばしば、こういったことが起こるらしい。それは、ひょっとすると「学校の常識」と「保護者の常識」がせめぎ合う瞬間なのかもれない。

 そして、これらがぶつかり合った時、やはり、校長のほうが強い。校長はPTAでは一会員か、せいぜい顧問だから、本来は総会によって認められた広報委員会の活動に強制力を持つ「チェック」を行うことはできないはずなのだが、それを行ってしまえるだけの「権威」がある。

 ぼくなど、そういったことが起きたなら、それ自体を「相互学習の場」にすればいいと思うのだが、とはいえ、現場で似たことを体験した人には、そんな甘いもんじゃないと反論されそうだ。

著:川端裕人
(婦人公論 2007.6.22 掲載)

PDF版注釈
 この文書は、川端裕人が中央公論新社の「婦人公論」誌上にて、2007年4月より1年間にわたって連載した(文書作成時は連載中)、「みんなのPTAをさがして」をPDF化したものです。多くの人に読んでいただくために、ブログ・リヴァイアさん、日々のわざ にて公開することにしました。このままの形であれば、自由に複製・配布してくださってかまいません。
 なお、このPDF版は、入稿時の原稿を元にして、体裁を整えたものです。誤字脱字などの誤りは、多く残っており、また、細かな点で、雑誌掲載時とは違う部分があることはご承知置きください。
川端裕人
posted by Pさん at 23:53| Comment(6) | TrackBack(0) | 記事 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
こちらでは初めまして!
Pさん、読みやすいブログ、ありがとうございます。

「最初のコメントは、誰が書くのだろう?」と楽しみにしていたのですが…。私…でも良いのでしょうか(恐る恐る)。
『第4回 役員はえらいわけじゃない』で横横無尽だったPTAにこの回の“校長チェック”で、ちょっと縦関係が芽生えた感じですよね?頑張れ、<横横無尽>!!
Posted by とまて at 2007年10月30日 14:51
とまてさん、どうもです。
管理人:P です。

試行錯誤を繰り返して、なんとかここまで辿りつきました。「読みやすい」と評していただき、ほっとしてます。

さて、これからココがどんな場になっていくのか、ボクにも予想がつきませんが、みなさんに活用していただければ幸いです。
ボクは、管理人として常駐して、機能的な面のお世話をしていくつもりです。何か要望があれば、コメントでお知らせください。

ではでは、今後ともどうぞご贔屓に!
Posted by Pさん at 2007年10月31日 08:41
自分の前記コメント、運営上の都合で少し修整しました。ご了承ください。
Posted by Pさん at 2007年11月05日 10:22
婦人公論を久しぶりに購入して,読んでいたら川端さんのエッセイに目がとまり,ブログまでお邪魔し,ここまでやってきた次第です。
私もPTA役員となって数年ですが,この第5回の記事を読んで,まさしく!って痛感して激しく同意したのが,「立ちはだかる校長」です。
『一会員であるはずの校長が委員会活動に強制力を持つ「チェック」を行ってしまうだけの「権威」がある。』
私は昨年会長に就任して直後にまさしくこの「権威」によって,ダメだしをされてしまいました。
以来私はあくまでもPTA活動とはいっても,最高権限は校長にあるのだなぁ・・・と,同じく鬱屈感を抱えながら,現在も続投しております。
私はPTA活動が大好きです。そもそもなんらかの形で委員になったのも元をただせばもっとたくさんの友人が欲しかったからです。
たくさんの人と知り合え,いろんな知識や情報を得る事が出来,その活動を通じた上で仲良くなれてもっと多方面にも輪が広がっていったからです。
でも,どんどんPTA組織の中枢に近づくにつれて,楽しいはずの活動が矛盾や,理不尽さや,窮屈感まで伴うものだと感じるようになりました。
私は川端さんのエッセイを読む事で,今とても救われた気持ちになっています。任期は後僅か・・・。
残された時間をもっと有意義に意欲的にこなしていけるよう頑張ろうと元気を貰えました。
連載これからも楽しみにしています。
Posted by ちゅま at 2007年12月13日 18:39
ちゅまさん、コメントありがとうございます。
管理人:P です。

これまで川端さんの本家ブログを含めていろいろな方の反応を読み、この連載は、PTAに関わるいろいろな方の心を掬い/救い上げるようなものなのだな、と感じています。

どうぞ、周りの方々にも薦めてみてください。携帯でも割と読みやすいはずですので。

もうじき、第18回を載せた次号が店頭に並びます。そのころには、こちらもまた掲載記事を増やせることと思います。今後とも、どうぞよろしくお願いします。
Posted by Pさん at 2007年12月18日 23:05
記事の中に頻出する世田谷区の「PTAのしおり」は、川端さんに絶賛されていますが、栃木県が、なかなか良さそうなPTAの資料を作って、webで公開しているのを見つけました。

『あすのPTAのためのハンドブック』
http://www.pref.tochigi.jp/education/shougai/suishinjigyou/pta00.html

「PTAが自ら置かれている状況を的確に把握し、より効果的な活動を展開するための手がかりとなることを願って、平成9年3月より「冊子」で発行」してきたものを、ネットでも公開しているとのことです。
斜め読みをしただけですが、変に教条主義的になることなく、割と客観的にかつ現状を踏まえた記述がなされているように思えました。
「一応、PTAの会員なんだけど、いまひとつ全貌・実態が掴めないのよね」なんていう方が、対象となるPTAを概観するのに役に立つのではないかと。

「みんなのPTAを探して」のサブテキストとしてお薦め、です。(たぶん)
Posted by Pさん at 2007年12月19日 21:41
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