川端裕人さんの「みんなのPTAを探して」(「婦人公論」連載:2007/4〜2008/3)のバックナンバーを「ブログ版」として公開しています。(著者公認)
 はじめていらっしゃった方は、まずは著者本人の「ごあいさつ」をお読みください。
管理人:Pさん
 

2008年04月28日

第21回 全国の多彩な取り組みを紹介!


本家関連エントリー
 「事例集」みたいな回です (2008.2.22)
 久々アップ、婦人公論連載の20回目、21回目 (2008.4.24)


■ 親が教室に入って活動


 前回お届けした今野雅裕さん(政策研究大学院大学副学長)との対談でも感じたのだが、一般論としてPTA活動は、今、活性化しているらしい。一昔前に「現役保護者」だった知人に現状を話すと、「すごく盛んなんだね」と妙に感心される。とはいえ、自分は今のPTAしか知らないからピンとこない。

 はたして、今、各地のPTAはどのように活性化しているのだろうか。また、それぞれの現場で、どんな問題に直面し、どのように解決しようとしているのか。今野さんが世田谷区の公立小学校PTAの代表者研修(校長、副校長、PTA役員が参加)のために作成した資料や、2006年に日本PTA全国協議会がまとめた「PTAの組織・運営の改善についての事例報告及びアンケート調査の結果」(これも実質的に今野さんの執筆)を読みつつ、これまでふれてきた事例もあわせ、改めて考えてみた。

 まず、背景には最近の教育行政の動向があるという。「開かれた学校」「地域にねざした学校」「学校支援ボランティア」「学社融合」「学校評議員」「学校評価」等々……。学校運営に親の参加を促す方向で、行政が動いている。

 連載で何度も言及した千葉県習志野市の秋津コミュニティはこの分野での先駆者といえる。また「サークル」の取材でお邪魔した、横浜市のすみれが丘小学校では、毎年100人以上の保護者が、授業の補助のために教室に入って活動していた。こういったことが、今や全国的に珍しくなくなっている。

 といった具合。おそらく事例は、枚挙にいとまがない。授業に直接かかわる学校へのソフト面での支援からはじまって、プラスアルファの「何か」を課外活動的に提供するものにいたるまで、実に多彩な活動をPTAが担っているわけで、正直「くらくら」してしまうのだ。

■ 負担を分散させる工夫

 
 「くらくら」するのには2つ理由がある。ひとつは、PTAの実務にたずさわる者として、本当にすごいなあと思うから。「子どもの笑顔が直接見える活動がしたい」と願うぼくは、まさにこれなんだよと膝を打つ。そしてもうひとつは、こういったことを実現するには、さらりと書かれた結果以上の、想像を絶する苦労が払われているのが、やはり実務者として透けて見えてしまうがゆえ。

 「盛ん」と「負担」は光と影の関係だ。相反する2つの意味での「くらくら」の葛藤は、たぶん、PTAの普遍的なテーマではないだろうか。「義務と化したボランティア」という変な成り立ちの団体だからこそ、明暗のコントラストはことさら強い。活性化をよしとするなら、「影」の部分に踏み込むのも急務だ。

 というわけで、活動を無理のないものにするためのさまざまな工夫の事例。まずは、役員や委員会などのコアメンバーに集中しがちな業務を、できるだけ多くの会員に振り分けて負担を減らす方法。

  • 神奈川県川崎市のM小学校PTA。「全会員参加の一人一役制」を導入し、学年・広報・成人教育・校外・役員選考のどれかの委員会に全会員が所属して活動する。
  • 埼玉県新座市のT小学校PTA。「一家庭一係制」を実施。常置委員ではない者全員に、なにがしかの係活動を割り振る。運動会や持久走大会の手伝い、ベルマーク集計、学級文庫整理、朝のあいさつ、講演会サポートなど。
  • 長崎県大村市のT小学校PTA。評議員、専門部員以外も、年に1度は学校にかかわる仕事をしてもらう。校内球技大会、隣接3校球技大会、研修会、講演会の4つのうちから選択。
  • 広島県福山市のH小学校PTA。保護者は子どもの卒業までにかならず役員を務める。入学時に、何年生の時に役員をするか予約してもらう。
 いかがだろう。こういった「一人一役」的な取り組みは、個々人の事情に応じて、ある程度、自由度を持たせつつも、全員が活動にかかわるべきだという発想に貫かれている。PTAは「会員が平等な義務と責任を負う」団体だから「一人一役」は本来の姿なのかもしれない。

 ただ、現時点では、ぼくとしては、かなりひっかかりをおぼえるのも事実。本来、任意加入の団体なのに、事実上の強制加入となっているところが多いため、PTAに意義を見いだせない者にまで業務を押し付けることになるからだ。このことがPTA特有の息苦しさにもつながっていると思う。と疑問を差し挟みつつも、背に腹は代えられず、少しでも負担を分散させたいという気持ちは、とてもよく理解できる。PTAの業務は子育て現役世代が担うボランティアの域を量的に越えているから、個人に集中する仕事をいかに軽くするかは本当に切実なのだ。

 切実さはそのままに、「なにがなんでもみんなで活動」というふうではなく、会員のボランティアマインドに期待するやり方もある。ぼくとしてはむしろそちらに注目するし、期待する。

  • 神奈川県横浜市のH中学校PTAの「スタッフ制」。委員会を廃止して、クラスサポート、広報、広報配布、夏祭り、文化祭、体育祭、制服リサイクル、カルチャーといった分野で「スタッフ」を、年度はじめに募集。保護者の約3分の2が登録するという。
  • 同じく横浜市のG中学校PTA。「可能な時にすこしだけやりたい人」が気軽に参加できるワン・デイ・ボランティア制度を開始。清掃活動、体育大会、文化発表会など。希望者は事前登録だけでなく、単発でも参加できる。またボランティア参加者は「便り」で名前も掲載。
 これからのPTAは、義務や強制ではなく「自発精神と相互の敬意」をベースにしていかなければ立ち行かないと、ぼくは信じている。ボランティアの参加者をきちんと便りで紹介する仕組みなど、小さなことだが、わが意を得たりだ。PTAのような性質の団体で通用する価値の「通貨」は、お金ではなくクレジット(信用・信頼)にちがいないから。

■ 続けることが重要ではない


 業務をどう分散させるかという点に話が集中してしまったが、もちろん、業務そのものをどう変えていくかという議論もある。

  • 岐阜県岐阜市のI小学校PTAの「アンケートによる委員会づくり」。年度末に保護者全員に興味関心分野を聞き、それをもとに委員会を設置。現在、「パソコン」「パトロール」「お菓子手作り」(!)などを含む11の委員会がある。
  • 神奈川県横浜市のK小学校PTA。前年度にとらわれず各委員会の裁量による活動を推奨する。恒例行事は一部に限り、委員の企画による多様な事業を実施。いつも全員が集まらなくてもよい柔軟な運営を周知徹底させる。
  • 静岡市のN中学校PTA、福岡市のH小学校PTAなどの、定期アンケート。毎年かならず会員の意識についてアンケート調査を実施し、活動の見直しをはかる。見直しそのものを制度化している。
 などなど。ここで気づくのは、「前年通り」「例年通り」にとらわれないために、さまざまな努力が払われていることだ。

 背景にはPTA固有の事情があると思う。どんどん構成メンバーが変わる「通過的」な団体であって、コアメンバーを固定できない弱みがある。一時、盛り上がってすばらしい活動を創ったとしても、次の世代に手渡した時には形骸化した「やらされる」たぐいの事業になりかねない。その「形骸化速度」には恐ろしいものがあって、2、3年もあれば十分だ。そして、一度形骸化した事業で一年のカレンダーが埋まってしまうと、それをこなすのに精一杯になってしまい、事業の再検討をする余力などとうていなくなってしまう。PTAの新規事業を立ち上げる時、「続かなければ意味がない」という主旨のことを口にする人がいるけれど、ぼくとしては、むしろ「続きすぎるのにもほどがある」と言いたい。

■ 地域とのつながりを模索


 PTAの活動の主な担い手は、今も昔も現役の保護者だが、その枠を取り外す試みも増えているようだ。冒頭にも述べた「開かれた学校」「地域にねざした学校」「学社融合」といったキーワードとも連動している。

  • 静岡県沼津市のH小学校PTA。子ども会からの推薦で、PTA役員のOG・OB、地域のお年寄り、卒業生である高校生などに「PTAサポーター」として活動を一緒に担ってもらっている。
  • 北海道千歳市のS小学校PTCA。在籍児童のない地域住民にも正会員として加入してもらい、単なる協力者ではなく、主体的な立場で活動を担ってもらう。名称にも CommunityのCを入れた。
  • 宮城県大崎市のF小学校PTA。PTA内の地区会で、地域の人々を協力委員と位置づけ、参加をつのった。これにより地域参加型の事業実施が円滑になった。
 こんなふうにOG・OB、あるいは地域住民といった存在は、PTAの弱点である継続性を補ってくれるかもしれない。実際、ある小学校や中学校と一番長くつき合うのは、「地域の人」(その中には、OG・OBだけでなく、実は現役保護者も含まれる)なのだ。
 

■ 有給休暇でPTA活動を!

 
 以上、事例を紹介しつつ、「新たな展開」を俯瞰してみた。今のままでは「活性化」が過度な「負担」となりかねないことに不安をおぼえつつ、保護者や地域住民が学校教育にソフト面でもかかわっていくビジョンには魅力を感じる。

 ちなみに、こういったことは公立校を核にした地域社会の再建とセットにして語られることが多い。最近、子どもが犠牲者になる事件があるたびに、防犯パトロールなどを通じて地域社会が再結束していく必要が説かれるけれど、実効性にとぼしく副作用も大きそうなそんなやり方よりも(連載12回を参照のこと)、学校教育にかかわるなかで保護者や地域の絆が深まり、結果的に防犯にもつながるほうがずっと健全だ。

 しかしながら、そのように肯定的に捉えたうえでも、今後、このような「活性化」が広がっていくなら、やはり「今のまま」では立ち行かないことも断言できる。「一人一役」や「ボランティア」などで、ある程度は負担を分散できるかもしれないが、業務そのものが増えていくわけだろうし、OG・OBなど地域からの参加にもおのずと限界がある。

 というわけで、教育行政が「親・PTAの学校運営への参加」を今以上に望むなら、もっと大きな枠組みでの環境整備が必要だ。端的に言ってしまえば、フルタイムで働く母親や父親が、活動に参加しやすい枠組みが作れないか。

 わが国の企業では「PTAがあるので午前半休します」というのがなかなか通じないらしい。有給休暇をPTA活動のためにあてたり、ボランティア休暇を申請したり、ということがごく当然にできるようになってほしい。それなしには、今後どんどん減るだろう「専業主婦」にしわ寄せがいくことになり、ますますジリ貧になる。休暇の裁量の範囲など企業が決めることだから、ぼくがここで主張してもなかなか届くはずもなく、もどかしい。

 自分が「現役」のうちに、なにか変化をたぐり寄せられるだろうか。子どもたちが親になる頃ならどうか。思わず遠い目になってしまう今日この頃だ。

著:川端裕人
(婦人公論 2008.3.7 掲載)

PDF版注釈
 この文書は、川端裕人が中央公論新社の「婦人公論」誌上にて、2007年4月より1年間にわたって連載した(文書作成時は連載中)、「みんなのPTAを探して」をPDF化したものです。多くの人に読んでいただくために、ブログ・リヴァイアさん、日々のわざ にて公開することにしました。このままの形であれば、自由に複製・配布してくださってかまいません。
 なお、このPDF版は、入稿時の原稿を元にして、体裁を整えたものです。誤字脱字などの誤りは、多く残っており、また、細かな点で、雑誌掲載時とは違う部分があることはご承知置きください。
川端裕人
posted by Pさん at 23:18| Comment(5) | TrackBack(0) | 記事 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
こんばんは。PTA関連記事へのコメントは多分初めてです。
この記事へのコメントではないのですが 現状についての報告(?)です。

一昨日 中学校のPTA総会がありました。
教職員と本部役員以外の出席者は十数人。多分何らかの役員でしょう。もしかして役員以外の出席者は私だけだったかも。(昨年度は学級役員をやりました。)
中学校の総会は5回目ですが こんなに出席者が少ないのは初めてです。(全校生徒415名)
連休の谷間で翌日は小学校の総会ですが 例年のことです。
総会前の参観は各学年とも多くの保護者が出席していました。
総会は前年の決算・新役員・新年度予算案の承認が主目的ですが それにしても…

中学校は3年間と短い(?)し 役員をしなくてすむ可能性も高いので 面倒なコトには関わらないようにということでしょうか。
小学校と違って 直接子供と関わることは少ないですしね。

PTA会長には「現状をなんとかしたい!」という意欲が見られたのですが 役員だけの空回りは避けたいところです。

他の保護者の方と話していて思ったのは 学校内の役員ならいいけれど 市PTA連の当番校は負担が大きすぎるという方が多いこと。
もう少し負担を減らせないかというのが正直なところ。

地方でもあり地域活動は割と盛んだと思うのですが 学校との結びつきはどうでしょう。
親子3代その学校という方々も結構いらっしゃるし 子供クラブ(小中学生) スポ少活動も熱心なんですけどね。

変革(?)の意欲と(膨大な?)エネルギーを持つ方の登場を待つうちに卒業…ということになるのでしょうか。
明るい話題でなくてすみません。



Posted by 沙羅樹 at 2008年05月04日 01:25
 「みんなの負担を減らし、活動に参加する人を増やそう」という総論には反対する人はいない。しかし、具体的にこうしてはどうかと問うと、多く反対意見が出る。そこには義務と思っている人や、今まで活動をしてきた人からの抵抗圧力が多い。

毎学期行なっている講座などを減らそうとすると
「今までやって来た意義を考えないといけない」
「開催しない学期は何をするのか」

印刷が負担ならば、外注に出してはどうか
「会員の共同作業が大事ではないか」
「外注してお金で片付けるのはよくない」

広報活動を紙媒体だけでなく、ネット媒体(HP、メール)も活用して多くの情報を届けてはどうか
「全ての家庭が見れる環境ではないので一部に偏るのではないか」
「紙媒体とネットの二度手間ではないか」

PTAルームのパソコンを、インターネットに接続出できるようにして、文書作成のやり取りを簡単にし、サポートしてくれる人を増やそう、また会員の意見や質問をメールでも受けれるようにしよう。
「費用対効果がそれほどあるとは思えない」
「誹謗中傷などトラブルが心配だ」
「出きる人が役員にいなくなったらどうする」

役員会、部長会、運営委員会と多階層に会議をするのを止めたらどうか、また、メールやSNSを利用して回数を減らそう
「みんなが集まって、顔を合わせてやることが大事だ」

等など反対が多い。ほとんどは、役員や委員の経験者からだ。負担を減らす、参加者を多くする等の改革をしようと思えば現役員への負担が多くなるというジレンマを抱え、会長としては負担を減らしたいのに負担が増える。結局、波風立てず例年通りとなってしまう。

Posted by yoshi at 2008年05月11日 09:32
沙羅樹さん、コメントありがとうございます。

ウチの子はまだ保育園なのであくまでも想像なのですが、小学生と中学生では、子どもに対する取り組み方の質が結構違いそうですね。そのあたり、PTAへの関わり方に表れてきそうだと思いました。
なんかこう、読んでいるだけで、じれったさ、もどかしさが伝わって来るような…。

yoshiさん、きっとこのコメントを読んで、何人もの方が「ある、ある、あるっ!」と首を強く縦に振っているのではないでしょうか。
ブログの方も拝読して、書かれていることに、とても共感しました。最低(?)2年との意気込みで、改革に取り組まれている姿勢、応援します。

改革はそれを成し遂げることよりも、くじけることなく地道に取り組み続けることこそが求められるのですよね。ついつい、出来たか出来ないか、でくじけそうになる自分に、ときどき言い聞かせています。
もっとも、「言うは易し」ですけれど。
Posted by Pさん at 2008年05月13日 00:23
初めてコメントさせていただきます。本年度小学校のPTA会長をさせていただくこととなりました。

まだ、過去まで読み切っていませんが、自分の中の疑問など同様な思いをされている方もいらっしゃる。あわせて、斬新な活動をされている事例など拝見して、新しい考えがさらに浮かんできます。

PTA役員自体が負担がないといったらウソになりますが、それが負担感となるか、満足感になるか大きな差だと思っています。

前例踏襲・旧態依然とした部分が非常に大きく、少し変化をさせようとするだけでも、「いままでは・・・」という声が聞こえてくる部分もあるのですが、ほんの少しでも、楽しく、ここに書かれてある事例も参考にして取り組んでみたいと思います。初めて土曜日に開催したPTA総会でも、パワーポイントを使って、今年の活動目標を発表させてもらいました。出来ることをできる人が、平日・土日とバランスの企画。趣味・特技を生かした活動など、これらがすべて出来るとは思っていますが、目標を持って活動を行いたいと思います。じっくりと過去記事も読ませていただき、参考にさせていただければと思います。ありがとうございます!
Posted by marvy at 2008年05月19日 22:31
marvyさん、初めまして。
コメントありがとうございます。

リンク先のサイトも、共感一杯で読みました。特に土曜開催の総会のくだりは、『そうだそうだ!』と心の中で合いの手を入れまくりました。
また、「おやじの会」はPTAそのものとは別組織なのでしょうが、PTAの本来のあるべき姿が垣間見られるように思いました。
そして、marvyさんが様々なネガティブ要因を粘り強く越えていく様子を読み、気分屋の自分としては身が引き締まる心持ちでした。
今後も、ときどき覗かさせていただきます。

記事の方、今朝方、最終回までコンプリートしましたので、どうぞじっくりとお楽しみくださいませ。
Posted by Pさん at 2008年05月23日 08:04
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